東京高等裁判所 昭和54年(行コ)101号 判決
当裁判所は、控訴人の本訴請求を棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり附加訂正するほか、原判決の理由と同じであるから、ここにこれを引用する。
一 原判決一五丁表五行ないし一六丁表三行まで(二1請求の原因2(一)の主張について)の判断を次のとおり改める。
「(一) 昭和四五年九月一〇日発行の第一回公報による出願公告は、昭和四四年四月一日付けの手続補正書による補正を看過し、右補正前の特許出願の願書及びこれに添付された明細書及び図面に記載された事項を掲載してされたことは当事者間に争いがない。
成立につき争いのない甲第一号証及び第二号証並びに甲第五号証によれば、右第一回公報には、特許法第五一条第三項所定の掲載事項のうち「明細書に記載した事項」の点をのぞいて、出願人の名称及び住所、特許出願の番号及び年月日、出願公告の番号及び年月日などを含めすべての事項が正確に掲載されていること、第一回公報の発行にあたつて看過された昭和四四年四月一日付け手続補正書による補正内容は、特許請求の範囲の記載をのちに認定するとおり訂正するほか、「発明の詳細な説明」欄において従来公知のライニング装置に言及するとともに、縦通材のフランジ部分から舌状突起を打出し形成することによる効果に関する記載を挿入するものであつて、明細書の「発明の詳細な説明」及び「図面」によつて開示された技術的事項は、右補正の前後を通して実質的に異同がないことが認められる。また、前掲各証拠によると、右補正による特許請求の範囲の記載の訂正は、本件発明を、縦通材のフランジに、板金体のリム部に引つかけるようにした舌状突起を設けることによつて、板金体を縦通材に取付ける手段としての「連結エレメント」を除去したライニングの構成とするものであつたことが認められるが、このような「連結エレメント」を省いたライニングの構成は、すでに「願書に最初に添付した明細書又は図面」に明らかに開示されている(第一回公報二欄二二行ないし二四行、五欄一八行ないし二〇行、第八図及び第九図参照)ことから、出願人である控訴人はもとより、担当審査官においても、いわゆる出願公告決定前の補正として、当然「明細書の要旨」を変更しないものとみなされるもの(特許法第四一条)と判断していたことが推認できる。右にみたような第一回公報による出願公告の掲載内容並びに昭和四四年四月一日付け手続補正書による補正内容に徴すると、第一回公報による出願公告が、控訴人主張のように本件出願の出願公告たるに値いしない無効なものとは到底認められない。
本件出願は、昭和四五年九月一〇日発行の第一回公報により出願公告されたものというべく、この点の控訴人の主張は採用できない。」
二 原判決二〇丁表一行「甲第九号証の一、二」を「乙第九号証の一、二」に改める。
三 原判決二二丁表二行(2請求の原因2(二)の主張について)の判断のあとに次のとおり附加する。
「3 請求の原因2(三)の主張について
出願公告がされることによつて、特許出願人にいわゆる仮保護の権利が生じ、また、特許権自体の存続期間の起算点が確定するほか、特許異議の申立も出願公告の日から二か月以内に限られるなど、出願公告の日は、当該出願に係わる利害関係人に重大な影響を及ぼすことからして、ある特許公報による出願公告が当該出願の出願公告と解されるか否かは、その特許公報の掲載内容に照らし客観的に判断されるべきことであり、前記認定のごとく、本件出願は、第一回公報の掲載内容に照らし、これが発行された昭和四五年九月一〇日に出願公告されたものと認められる以上、控訴人に出願公告日についてただ誤解があつたからといつて、出願公告の日が変更されるということはありえないことであり、被控訴人の過誤を根拠に信義則もしくは禁反言の法理を適用して本件出願の出願公告の日を控訴人主張のように考えることもできない。
この点に関する控訴人の主張は理由がない。」
そうすると、原判決は相当であつて、本件控訴は、理由がないので、これを棄却することとする。